秘伝の製法を守り続けて線香一筋350年。新しい香りにも挑戦する日本最古の老舗メーカー。
古くから中国や南蛮との交易が盛んだった堺市は、東南アジアを原産とする漢方薬や香木の集積地でもあった。それらを扱う業者は薬種問屋で、株式会社梅栄堂も室町時代に始まった薬種問屋を前身としている。今から約350年前の明暦3年に、香りを専門に扱う「沈香屋」に。以来代々守られてきた門外不出の秘伝の製法は、16代目の中田社長へと受け継がれている。
代表取締役社長
中田信浩さん
| 株式会社梅栄堂 | |
| 〒590-0943 堺市堺区車之町東1丁1番4号 |
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| TEL | 072-229-4545 |
| 創業 | 明暦 3年 |
| 資本金 | 1,000万円 |
| 従業員 | 60名 |
| http://www.baieido.co.jp | |
株式会社梅栄堂 社屋
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| 売上好調の「残香飛」など新ジャンルの製品 |
天然香料にこだわった高級線香を製造販売。
日本の線香発祥の地である堺市には、戦前まで約80社もの専門業者がいたが、現在では堺市に大規模な製造拠点を持っているのは同社だけ。しかも、明暦年間から続く日本一古い専門メーカーとなった。「地場産業を守るためにも、この場所にこだわりたい」と中田社長はいう。線香に使われる香料には、天然香料とアルコール系合成香料があるが、同社では創業以来ずっと天然香料にこだわってきた。天然香料には伽羅、沈香、白檀、桂皮、丁字といったものがあり、いずれも調合が難しい。最近では高価な原料がネックになって、合成に切り替えるところが増えている。ベトナム産の伽羅原木で1キロ2000万円とか。それでも同社が天然にこだわり続けるのは、本物にしかない心に染み入る妙なる香り。「ごまかしの一切ない本物ならではの香りを、多くの人に知ってもらいたい」という同社の信念が、今では他社との差別化になっている。残念ながら天然香料は入手しにくくなったが、中田社長は世界中から香木が集まる香港で買付。在庫を充実させて、常によい原料が使えるようにしている。主力ブランド「好文木」をはじめ、同社の製品は百貨店と仏壇店を中心に、本社ビルのショールームでも売られている。売れ筋は1800円から2600円。高いものでは一束5万円の線香もあるという。若い人に香りをアピールするアンテナショップも、堺市内で展開中だ。
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コーヒー線香が大ヒット。新しい需要拡大にも尽力。
アロマテラピーの流行で「香り」への興味は高まったが、同社においても売上の95%はやはり仏事用の線香だ。線香の需要拡大に頭を悩ませていた時、知人から「仏壇に故人が好きだったコーヒーを供える人がいる」と聞き、これがヒントになってコーヒーの香りがするお線香の開発に乗り出すことにした。社員たちの「絶対に売れない」という反対を押し切って、コーヒーの成分を分析してオリジナルの香料を作った。「残香飛(ざんこうひ)」というネーミングで売り出したところ、これが思わぬヒット商品に。「部屋が線香臭くならない」と、若い人たちの間にも浸透した。当初2万箱作って売れなかったら撤退するつもりだったが、なんと約13万箱のヒット商品になった。中田社長のアイデアとユニークなネーミング、実行力が、新しい需要を喚起した形だ。引き続き、苺の香り「一期香(いちごこう)」、はちみつの香り「文々香(ぶんぶんこう)」、本物のお茶を練り込んだ緑茶の香りの「煎香茶(せんこうちゃ)」、ブラック珈琲の香り「残香飛ブラック」を発売。今も次なる香りを研究中である。「いくら需要が減っていると言っても、千年もの間愛用されてきた線香がここ何十年かでなくなるとは思えません。今後も天然香料にこだわった線香を作り続けたいと思います」。中田社長は静かに熱意を語った。


