大空を勇壮に泳ぐ鯉のぼり。手描きの伝統を守り続ける匠の技。

日本全国でもほとんど残っていないといわれる手描き鯉幟工房。大阪府下では唯一、この高儀のみが手描きの伝統を受け継ぐ。130年余りの歴史があり、現在、五代目の高田為八さんと六代目の武史さん親子が二人で製作している。昭和61年に「大阪の伝統工芸品」に指定された。五代目、六代目ともに「伝統工芸士」の認定を受けている。一枚一枚丹念に描かれた鯉幟は、まさに匠の技である。

堺技衆・堺技衆・認証番号0034 堺五月鯉幟工房「高儀」 伝統工芸士 高田武史

伝統工芸士
高田武史さん

堺五月鯉幟工房「高儀」
〒592-8341
堺市西区浜寺船尾町東3丁413
TEL 072-263-2205
創業 明治元年
従業員 3名
http://www.f6.dion.ne.jp/~may5day
高儀 外観

高儀 外観

職人の鮮やかな技が冴える商品例
職人の鮮やかな技が冴える商品例

こだわりの刷毛と顔料で“描き上げる”1世紀半、変わらない伝統の技法。

今や鯉幟のほとんどが印刷で大量生産される中、手描きの技を守り続けている。堺五月鯉幟の始まりは明治初期に遡る。当時、玩具商を営んでいた初代が、和紙でできた紙鯉をヒントに、和凧職人に作らせたのだという。迫力ある真鯉に金太郎がまたがった図柄は、明治末期に高儀の職人が考案し、鯉幟の定番となった。手描きの最大の特徴は、型を使わず、顔料で“描く”ということ。刷毛は特注のものを数十種類使い分ける。顔料にも相当なこだわりがある。ヨーロッパから輸入した、いわゆる「舶来もの」や、独自に探し出した耐光性の強いコバルトなど、空を泳がせたときに目を引く鮮やかな色を厳選して使っている。製作は、1枚ずつ仕上げるのではなく、一度に10枚、20枚と机の上に置いて、部分ごとに描いていく。目を描いた後、本体の骨描きをする。刷毛でぼかしを入れ、うろこの1枚1枚に細かい線を描くことで立体感を出す。人の手でしか表現できない匠の技が随所に光る。全ての工程において、二度描きや重ね塗りはしないという。描き直しの筆を入れると、どうしても筆跡が残ってしまうからだ。やり直しのきかない一本勝負。同時に何枚も描きながら、均一の商品に仕上げていくのである。「職人の世界は美術工芸とは違う」と武史さん。「きれいに描く、上手に描くという以上に、汚さずに描き上げることが肝心なんです」と話す。丹精込めて描き上げられた鯉幟は、手描きならではの力強さと美しさにあふれている。

現代の生活スタイルに合った新しい商品づくりにも挑戦。

一時はプリントの鯉幟に押されて、廃業寸前まで追い込まれたというが、大阪府の伝統工芸品に指定され、一般によく知られるところとなった。今では五代目と六代目の二人がかりで、年間約150セットの注文を受ける。手描き鯉幟の伝統を守る一方で、武史さんは新たなオリジナル商品づくりにも精力的に取り組んでいる。ひと昔前とは住宅事情が違い、鯉幟をあげられない家庭が多い。そこで今の生活の中で手軽に鯉幟の伝統を生かす方法として、掛け軸や屏風、額絵、ミニチュアの鯉幟などを考え出した。もちろんどれも手描きの技法で仕上げた手作りだ。「手で描くということに、とことんこだわっていきたい」と武史さん。また、「伝統をそのまま引き継ぐだけでは生き残れない。時代の流れとともにふさわしい形に変わっていかなくては」とも。ちょっとしたスペースに飾れる、セラミック製のかわいらしい鯉の置き物も作っている。製作にはとても手間がかかるが、技術に妥協はない。作る・売るの両立を目指し、実演販売などにも積極的に参加。オリジナル商品のアピールに努めている。

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