瞬時にフワッと溶ける「カットとろろ昆布」。時代が求める便利さとおいしさを全国へ。
堺の伝統産業を今に引き継ぎ、とろろ昆布を中心に昆布加工を行っている同社。昔ながらの手法を守りながらも、豊富な経験と技術を活かした新たな製法を研究・開発し、同業他社との差別化を図ってきた。とろろ昆布をシート状にした「カットとろろ昆布」も、技術力を示す商品のひとつだ。
代表取締役社長
海部佳樹さん
| 海部食品株式会社 | |
| 〒593-8315 堺市西区菱木1丁2314-3 |
|
| TEL | 072-272-5210 |
| 創業 | 明治 25年 |
| 資本金 | 1,200万円 |
| 従業員 | 65名 |
海部食品株式会社 社屋
![]() |
| カットとろろ昆布 |
お湯に瞬時に溶けるシート状とろろ昆布を開発。
とろろ昆布やおやつ昆布を主力商品としている同社が、「カットとろろ昆布」を考案し始めたのは昭和60年頃のこと。先代の社長が「とろろ昆布は一人分ずつ分けるのに手間がかかる。もっと手軽に小分けできれば、販売チャンスも広がるのでは」とひらめき、工場長中心にスタッフ全員で開発に着手した。試行錯誤を繰り返し、納得のいく商品ができたのは、それから5年以上後のこと。4cm角(約1g)という大きさは、すまし汁なら1枚、うどんなら2~3枚で適量になる使いやすいサイズだ。「シート状にするだけなら、特に難しくはないんです。ところが一般のとろろ昆布のように、お湯に入れても瞬時にフワッと溶けない。それをシート状にして実現するのに時間がかかりました」と海部社長。商品化に成功してさっそく大きな注文が入ったが、後が続かない。通常より価格が高いこともあり、商品化から売れない日々が続いた。「この商品は打ち切ろう」と考えたこともあったが、せっかく整備した生産体制を無駄にするのも惜しい。さまざまな用途をイメージしながら、外食から小売りまで販路開拓のために必死で営業に飛び回ったという。
![]() |
誰でも使える便利さが時代にマッチして販路拡大。
そうこうしているうちに、時代が少しずつ変化。外食産業における働き手が、パートやアルバイト中心になってきた。マニュアルに従って料理を仕上げるスタイルでは、技術を必要とする作業、手間のかかる作業はできるだけ省きたい。1枚ずつシートになっているとろろ昆布なら、誰でも料理の仕上げに浮かべるだけですむ。「スピードが求められる駅の立ち食いうどん屋なんか、特にそうですよね。うちの商品が、ようやく時代にマッチしてきたんだと思います」と、海部社長は分析する。現在「カットとろろ昆布」は、食品問屋を介して北海道から九州まで、全国津々浦々のレストラン・食堂で使われるようになった。「旅先のホテルやレストランで見つけることもありますよ」と、行く先々で商品の浸透ぶりを実感しているという。『堺技衆』に申請したのも、「カットとろろ昆布」が他社にない商品だったからだ。同社の高い技術力を示すにも、恰好の商品だったと言えるだろう。今でもシート状にするのは手作業であり、大量生産はできない。熟年の作業員による手作りで、品質をキープしている。「国内の昆布の収穫高は限られています。今後も地道に広く浅く、いろんな場面で役立つ食材を作っていきたいと思っています」。堺の昆布の伝統は、便利さという隠し味を利かせて、これからも引き継がれていくだろう。


